ヴェルツでは、ドイツメソッドで練習プログラムを作成しており、毎週の練習で同じメニューを反復して行うことはありません。
その中で今回、ドイツのWolfgang Schollhorn教授によって公開された「反復による、効果的な学習の妨げ」について説明したいと思います。
結論は、「同じ練習を3回行うと、脳はその刺激に適応してしまう」という研究結果です。
逆に言えば、何十回と同じ練習を繰り返すことは、脳に対する刺激による変化をもたすことはできないということです。
今回は4つに分けて、説明してきたいと思います。
1. 反復形式の練習の効果は?
この実験では、反復形式とバリエーション形式での2つの練習形式でのシュート練習によるパフォーマンスの結果を比較しました。
①反復練習は、その名の通り週2回練習後に各20分の反復練習をのみ。
②一方、バリエーション形式は、様々な種類を組み合わせて、反復も修正もありません。
結果は、皆さんのこれまでの文章を読んでのご想像通り、軸足の位置を変えたり、蹴る足を変えたり、助走やボールの種類、ゴールの種類を変化させたバリエーション形式トレーニングでは、なんと反復形式よりはるかに大きなパフォーマンスの向上を見せました。
驚くべきは、この後2週間休息を設けて再度パフォーマンスチェックをしたところ、反復形式はトレーニング前のレベルに戻ってしまったことです。
バリエーション形式は、2週間何もしなくても若干、パフォーマンスが向上したそうです。さらに4週間後も同様にパフォーマンスが上がっていました。
2. それでもなぜ反復形式が行われるのか?
反復形式は、一定のレベルまで反復を繰り返す必要があり、反復を継続しなければ質を保つことができません。これが日本のトレーニングでは、「上手くなりたければ、休息せずに反復しなさい!」と言われる所以です。
この現象は選手よりも指導者や大人の先入観やリスク回避によって起こっている、とも言われています。新しいメニューや複雑なメニュー、それによる失敗によって、安心感を得たり、拒絶反応が出るリスクを回避しようとして、反復形式をしてリスク回避します。
しかしサッカーでは、「技術ミスより、判断のミスが8割」と言われるほど、同じ局面や状態がないため、常に脳を動かして様々な状況判断が求められるトレーニングが必要です。
3. 最後まで成功しなくても良い
ドイツではトップレベルに至っても、トップの選手でもわからない複雑で複合的な練習メニューが組まれます。結果、練習を理解できないまま、練習が終了してしまうことも多々あるそうです。
それでも複雑で複合的な練習を取り入れるのは、サッカーのIQを高める効果的なトレーニングだからです。
われわれヴェルツでは、毎回対面でパスをして一定時間同じ練習を繰り返すような反復形式は、この観点からありません。
基礎から順番に教えることも多くはありません。ルールや文化、オーガナイズを作って、無意識的にパフォーマンス向上を狙るトレーニングを作成しています。
4. 成長しないのは理由がある
先ほども述べた通り反復することで一定のレベルに達することができます。
しかし、それはコーチが指示する反復練習であれば、週1回1時間の練習で上達することはありません。例えコーチが指示をしても、その反復が止まっておき、同じレベルもしくはそれ以下のレベルに戻ってしまいます。
しかし選手個人が自らの意思で自らの目標を設定して反復を行うことは、その限りではありません。教えられたものは繰り返さないと忘れてしまいますが、自分自身で学んだことは忘れません。
練習を休むことが不安、パフォーマンスが下がってしまう、成長しないといった悩みを抱える子供がいますが、反復形式の影響であることも示唆されています。
例え週1回でも成長する練習プログラムが作ること、そしてそれ以外の時間で能動的なトレーニングを行う精神力をサポートすることをヴェルツでは行っています。
今回、「なぜ毎回異なる練習をするのか?」というヴェルツメンバー疑問に答えてみました。詳しくは、Schollhorn, Prof.Dr, Wolfgangの研究結果をご覧ください!
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